農業を志すきっかけ

なぜ、関東の電気系会社でビリビリバリバリ働いていたせの畑が、電気のキャリアと安定収入を捨てて実家にUターン就農したのか、そのきっかけをご紹介します。

学食で食べた一皿のサラダ

農家を志すきっかけは私が大学生だった時の学食にありました。

 

私は十数年前に高校を卒業して岩手を出た後、関東の大学に行きました。

実家を出て一人暮らしをしていたため、外食が多くなっていったときのことです。

 

学食で食べた定食のサラダから一切「野菜の甘み」が感じられませんでした。

大学の友人たちに「野菜に甘みがない」と言うと、「野菜は普通、甘みはない」や「野菜は苦いもの」と言われました。

 

祖母の無農薬野菜で育った私は、野菜に甘みがあるのが当然のことと思っていたので、甘みのない野菜や苦みのある野菜を当然と思って食べている人たちがいることにショックを受けました

 

なぜ、野菜は苦いのか?

同時に、なぜ野菜を苦いと感じるのか考えました。

 

そこで思い出したのが、とある機会に食べた苦いほうれん草です。

そのほうれん草はスーパーや市場などにも売りに出されているような、虫食い等のない青々とした、とても見栄えの良いほうれん草でした。

しかし、おひたしにして食べたとき、口に入れた瞬間から苦みとビリビリという刺激を舌に感じ、食事の後もしばらく舌がビリビリしていました。

 

祖母の作ったほうれん草では苦みや舌のビリビリを感じたことが無かったので、私は大変驚きました。

むしろ、今までほうれん草は非常に甘みの強い野菜だと思っていたくらいです。

 

なぜ同じほうれん草でもこんなに違うのか、疑問に思ったのを覚えています。

 

しばらく原因を考えたところ、決定的な違いに気付きました。

もらったほうれん草では農薬を使用していて、祖母のほうれん草では農薬を使用していないということでした。

(その農薬を使ったほうれん草は、虫食いや病気を予防するために、一株のほうれん草に農薬を6回以上かけていたようです。)

 

苦みの原因は農薬

確かに、簡単に病害虫を予防できる農薬は便利です。

虫食いや病気を予防することで野菜の見栄えが良くなれば、買う人に手に取ってもらいやすくなります。

しかし、農薬を使えば使うほど、見栄えの良さと引き換えに野菜の味はどんどん苦くなっていってしまいます。

 

スーパーやコンビニで売られている野菜や飲食店で出てくる野菜のほとんどは「有機栽培」や「無農薬栽培」、「自然栽培」等の表記がない限り、量に違いはありますが農薬がかかっています。

今の時代、特に意識しない限り、普通に暮らしているだけで農薬のかかった野菜を食べていることになります。

 

そして、農薬のかかった野菜は苦いだけでなく、日常的に摂取していると、将来、あなた自身やあなたの子孫に健康被害が生じる危険性があります。

それにもかかわらず、スーパーやコンビニ、飲食店では農薬のかかった野菜であふれています。

普通に生活しているだけで人々の健康が損なわれていく世の中になってしまっているのです。

 

友人の何気ない一言がその後の人生を動かした

大学の友人たちにとって「野菜は苦い」というのは何気ない発言だったと思います。

しかし、私にとっては、「普段食べる野菜に含まれている農薬により知らず知らずのうちに健康が損なわれてしまう世の中」になっていることに気付かせてくれる、重要な発言でした。

 

この経験を通して、

・「農薬のかかった苦い野菜の味」=「野菜本来の味」と思っている人が多いこと

・農薬により知らず知らずのうちに健康が損なわれていく世の中になってしまっていること

に強い危機感を抱くようになりました。

 

そしてそのうちに、

・野菜は苦い、美味しくないと思っている人たちに、実は野菜はほんのり甘くて美味しいということを知ってもらい、野菜を少しでも好きになってもらいたい。

・無農薬の野菜を日常的に食べることで人々の健康を改善させたい。

という想いが、大学生活の中で芽生えました。

 

無農薬野菜の布教活動

布教活動といっても、大したことはしていません。

大学の友人たちと鍋パーティをするときに、祖母の無農薬野菜を提供しただけです。

 

ただ、これがとても大好評で、

「美味しい!」

「普段野菜嫌いだけど、この野菜なら食べれる!」

「これなら野菜好きになれる!」

と喜んでもらうことができました。

 

鍋パーティの経験から、普段野菜嫌いの人でも無農薬の美味しい野菜を食べれば野菜を好きになれるということが分かりました。

 

無農薬野菜が手に入りにくい世の中。そこで・・・

健康の改善まで考えると普段から無農薬野菜を食べる必要があります。

ところが、スーパーや飲食店では農薬を使った野菜がほとんどとなっているため、なかなか無農薬の野菜は手に入りません。

 

そこで、私自身が無農薬の野菜を生産・販売することで、野菜好きを増やし、より多くの人を健康にしたいと思い、農家になる決意をしました。

 

農家になりたい!でもちょっと回り道・・・

とは言いつつも農業での収入に不安があったため、大学卒業後は電機業界に就職しました。

しかし、会社生活が4年、5年と経つにつれ、早く美味しい野菜を多くの人に届けたいという気持ちが日に日に募り、

ついに2019年6月に脱サラして農業を始めるに至りました。

 

終わりに

私の大学生の時の経験と農業に対する熱意を家族と共有し、せの畑では、

 

「野菜は本来甘みがあること、苦くないこと」を
より多くの人に知ってもらい、
美味しい食べ物で、お客様を健康にしたい

 

という想いで日々野菜作りに励んでいます。

おわり